執筆者その1の山川です。
仮にも建築を学んだ身として多少なりとも関係のありそうな記事を書こうとしていたところ、好きな映画であるジョンウィックのロケ地を調べていたら面白い気付きがありました。
建物の外観と内観は別のロケ地
はい。見出しに書いたことが全てなのですが、登場した建物の多くは外と中を別のロケ地で撮影していたんですね。これが映画界隈では当たり前の事なのかは知りませんが、初めて知ったため衝撃を受けました。映画を観ている際に違和感を覚えることなく視聴できていたため、完全に一つの建物として認識しており、繋ぎの技術や俳優の演技力には驚くばかりです。
今回はその内の最も重要な物件の一つであるニューヨークのコンチネンタルホテルについてです。内部は他物件のホテル(Cunard building)の一角であったり使用されていない廃墟・スタジオなど複数使用されているようですので、そこまで何か特筆事項があるわけではないです。が、外観で採用された物件が興味深いため、建築様式という一点から見た詳細と個人的採用理由を書きます。
Wall Street Court
外観として選ばれたのがかの有名なウオール街にありますWall Street Courtです。こちらは1904年に蒸気船会社の本社として建てられました。この建物は19世紀にヨーロッパで始まったネオルネッサンス建築の一つです。ネオルネッサンス建築とはルネッサンス・リバイバル建築ともいわれ、14世紀頃に建てられたルネッサンス建築と現代の建築様式を織り交ぜたものになります。
ルネッサンス建築は幾何学的端正な構造と、神殿の様な華麗な設計が調和している建築様式です。普遍的な美しさを求めた結果、楽器の和音の様な特定の整数比で整えられた設計を重視するよう発展したことが、なんともヨーロッパらしさを感じられます。
しかしルネッサンス建築自体が古代のローマ建築を現代に再生(=renaissance)し発展させようとしたものになる為、言ってしまえば焼き直しの焼き直しになります。YouTubeやTikTokでよく観る光景ですね。
ではなぜこの建物が選ばれたのかというところですが、単純に殺し屋と巨額の金は切れないものであるため、世界の金融的中心であるウォール街に主要拠点を置きたかったのだと思います(作中設定では数あるホテルの内の一つですが)。しかしその中でもWall Street Courtが選ばれたのは外観、引いては建築様式が作品に合うと考えたからではないでしょうか。
ジョンウィックのコンチネンタルホテル内ではルールを絶対視しており、それを破るものを絶対に許しはしません。また、4部作すべてにおいて劇場や神殿が舞台になることが多く、作中では古典めいた儀式や誓いが幾度も登場しています。つまりは規律を重んじ。芸術的・宗教的表現を用いるこの作品は、ルネッサンス建築に通ずるものが多いと考えます。そこに最先端の技術を用いて戦う殺し屋達のアクションを盛り込んだ映画はネオルネッサンス的ともいえるんじゃないでしょうか。
まあ殆どが私の主観的な推論なのですが、主要拠点としてピッタリな建物であると思います。
最後に
今回一つの建物だけでもこれだけ面白い発見がありました。普段とは違う視点で作品を見るとまた違う景色が見えてきますね。
ジョンウィックの映画自体4部作ありますし、他作品においても新たに発見したことがあればまた記事にします。