総合資格学院。
この名前は建築士を目指しているのであれば知らない方はいないのではないでしょうか。
建築士の資格取得といえば今回取り上げる総合資格学院と日建学院がまず候補に挙がると言っても過言ではないほど、この2つの資格学校は建築業界では有名であると思っています。
そして一級建築士試験で毎年最大の合格人数を誇っているのが総合資格学院になります。
私は現在一級建築士取得のために独学で勉強をしていますが、以前はこの総合資格学院に通って勉強をしていました。
今回はその経験を踏まえて、総合資格学院に対する私なりの考えをまとめさせていただきます。
建築士を始めとした資格所得のために資格学校に通うか迷っている方、独学は諦めたけど、どの資格学校に通えばいいのか分からないという方には是非読んでほしい内容となっています。
総合資格学院には通わなくても合格できる
早速ですが結論を述べさせていただきます。
総合資格学院への通学はお勧めしません。特に受験しようと思った初年度だけでも独学で勉強してみるのが良いのではないでしょうか。
総合資格学院に通っておきながら学科で脱落した負け組が何を言っても、負け犬の遠吠えかも知れませんが、少なくとも私は一年間の通学でそう感じました。その理由を箇条書きにして整理していきましょう。
- 価格設定が高すぎる
- インターネット上に教材、資料が大量に存在している
- 資格学校に通ったから受かるのではなく、しっかりと計画的に勉強したから合格する
以上の3点から私は総合資格学院には通学する必要がないと判断しました。
順に詳しく考えていきましょう
価格設定が高すぎる
総合資格学院をお勧めしない最大の要因です。
令和5年に受講料が改訂され、税込み価格にして15万円以上値下げされました。しかし依然その価格は120万円近く、一級建築士を目指す若手の建築技術者が気軽に払える金額ではありません。結婚して家庭を持っている方にとっては選択肢に挙げることすら困難な価格設定ではないでしょうか。
勉強のための費用として分かりやすくイメージしやすい大学の学費と比較して考えてみましょう。
初年度学費(入学金等諸費用込み) | |
国立 | 約80万円 |
私立文系 | 約120万円 |
私立理系 | 約150万円 |
総合資格学院 | 約120万円 |
単純な初年度の金額面のみで考えても総合資格学院への通学は私立文系に通うことと大差ないだけの金銭的負担がのしかかってきます。
いえ、申し訳ありませんが嘘を吐きました。
総合資格学院の場合はこの受講料に加えてGWなどの大型連休ごとの特別講義などが複数存在しており、受講生は半強制的に高い追加費用を払って参加させられます。そのため実質的には私立理系に並ぶかもしれません。(断ることは可能ですがかなり強めに参加を促されるので半強制的と表現させていただきました)
またこの金額で受けることが出来るサービスにも大学と総合資格学院にはかなり開きがあります。
まず一番イメージしやすい点で考えると講義数にかなりの差があります。大学では4年間で128単位を取得する必要があり、単純に1年分にすると32単位となります。そして一般的にはその単位数×15~30コマ分の講義、実習などが行われます。
一方で総合資格学院の講義は週に1度6時間程度行うのみです。金額を年間の受講数で割ると総合資格学院はなんと一日あたり約2.5万円という狂気に片足突っ込んでいる料金設定です。
意味のある計算であるかは怪しいところですが、これだけの金額を一年で使い切ろうと考えると単純に計算して120万円/365日=約3300円/日となります。大衆焼肉の食べ放題であれば毎日食べても釣り合ってしまいます。
毎日焼肉というのは極端な例えはありますが、定期的においしいものを食べて英気を養う方が、高い幸福度を維持しながら勉強にも継続的に打ち込めると私は思います。
インターネット上に教材、資料が大量に存在している
独学での学習を勧める理由の二つ目はインターネットの発達による情報格差の縮小です。
私はまだまだ未熟な若輩者であるため、10年以上前の建築業界の実情やそのころの建築士受験の状況を知りません。しかし、YouTubeを始めとした動画サイトや建築士受験を応援するブログなどの更新日、投稿日を見るとここ3年以内のものが非常にたくさんあります。
これらは程度の差はあれど、非常にわかりやすく構成されています。また情報の発信者が多いため、一つの項目について複数の視点や考え方を知ることが出来、その中で自分に合った学習法を選択することが出来ます。
総合資格学院は授業の質はもちろん高いのですが、人間である以上効率的な学習法には個人差があります。
自分に合った学習法を選択できることは独学で勉強を進めることの大きなメリットであると思います。
資格学校に通ったから受かるのではなく、しっかりと計画的に勉強したから合格する
この点については何を当たり前のことを言っているのかと感じる方も多いと思います。
しかし、総合資格学院に一年間通学してそのことが理屈ではなく心で理解できました。
総合資格学院に通って学習をしていた人間の中で合格者と不合格者を分けていた要素、それは単純に一つの要素のみによって決定されているとは思っていません。しかし、一部の例外を除き、学習に対する熱量、講義に臨む姿勢がそのまま合格と不合格を分けていたと感じています。
何度か行われた模試の結果はもちろん、本番で合格者と不合格者の顔ぶれを見たとき私は「やっぱりな」と思いました。
一部の異常な要領の良さや圧倒的な地頭の良さで得点を伸ばしていった方ももちろんいましたが、合格者の大半が総合資格学院の用意したカリキュラムをしっかりとこなし、講義終了後も講師の先生に積極的に質問をして疑問点をつぶしていくことで、堅実に点を伸ばしていきました。
そしてその総合資格学院の用意したカリキュラムこそが曲者で、正直この学習量をこなせばそりゃ点は伸びるだろうなと思えるほどの量でした。
私は小学生の頃から学校の宿題は貯めに貯めて最終的に居残りをさせられることで片づけてきたタチでした。そんな怠け者が受かるはずがありません。やらされることがとにかく嫌いだったのです。
しかし反面、自分で興味のあることを調べ知識を深めていくことは好きでした。
同じだけの学習量がこなせれば合格に近づくのであれば、私は勉強の仕方を自分で決めて、自分の考え方を検証できる独学の方が楽しく継続できるのではないかと考えました。
総合資格学院のメリットとデメリット
次に総合資格学院へ通うことでのメリットとデメリットを箇条書きにして整理していき、その後、各項目についてなぜそのような評価を下したのかという具体的な理由を述べていきたいと思います。
メリット
- 授業、教材の質は非常に良好
- 周囲の環境が危機感を持たせてくれる
- スケジューリングは丸投げ出来る
- 高額な受講料による不退転の決意
流石に高い受講料を取っているだけあって教材や講義の質自体は非常に良好で分かりやすいと感じました。ただし、講義の内容に関しては講義を担当する講師によって当たりはずれはあるかもしれません。その点に関して受講する前に把握するのは難しいので、通学を考えている校舎がどうであるかは、周囲の方の口コミや、身の回りに通っていた方がいるのであれば直接話を伺って判断した方が良いでしょう。
周囲の環境とスケジューリングに関しては人によりデメリットとなり得るかもしれませんが、基本的にはメリットとして紹介させていただきます。
総合資格学院では各講義の初めに前回までの講義がどれだけ理解できているか、しっかりと復習が出来ているかを確認するテストが行われます。そしてその結果は毎回張り出され、自分が今集団の中でどの程度の位置にいるのか明確になります。その結果をモチベーションとして勉強を継続させられる方や、緊張感により勉強に身が入るという方にとっては非常に良い環境でしょう。
また、スケジュールは通う校舎により完全に固定されるため、良くも悪くもこちらが考えることは何もありません。受講生は与えられた課題をしっかりとこなすことに集中することで合格出来るだけの知識を身に着けられるようになっています。
そして本来はデメリットとなるはずの高額な受講料ですが、ある意味ではモチベーション維持に一役買っていると言えるでしょう。しかし、これも私のなまけ癖の前では無力でした。
デメリット
- 非常に高額
- スケジュールが固定されている
デメリットとして二つ挙げさせていただきましたが、スケジュールがデメリットとなるのはごく一部の方のみであると思われるので、実質のデメリットは料金の一つのみでしょう。
しかしこの一点のデメリットのみで先ほどまで述べていたメリット全てを打ち消して余りあると私は思います。
逆に言えばこの金額を何とも思わないのであれば、迷わず通学を選ぶことをお勧めします。これは一度総合資格学院での講義を体験したからこその感想ですが、講義や教材自体は一流のものであったと思います。
私自身もさすがに高額すぎて金額に見合っていないと思いはするものの、やはり合格者数全国一番のノウハウは流石のもので、あの講義や教材が無料やもっと手ごろな金額設定であれば迷わず参加します。
通った方が良い人
ここまで総合資格学院には通わずとも建築士試験には合格できるという前提で話を進めてきましたが、それでも総合資格学院に通った方が良い方、通う価値がある方は確かに存在していると思います。
そういった方の特徴を列記していこうと思います。
- 基礎が全く出来ていない方
- 自分でスケジュールを組むのが壊滅的に下手な方
- 学校のような場で回りと競い合ったり、協力した方が違らが発揮できる方
- 他人に提示されたタスクをこなすことが苦にならない、むしろ楽しいという方
以上のような方々は総合資格学院に通う価値があると思います。
順番に深堀していきましょう
基礎が全く出来ていない方(製図試験含む)
建築士試験の受験を考えている方は、多くが建築学科、若しくはそれに類する場所である程度の専門教育を受けているかと思います。
しかし中には全く別の世界から飛び込んできて建築士試験を受験しようと考えている方もいらっしゃるでしょう。そういった方はまず受験資格を満たすことがかなり高いハードルであるとは思いますが、それすら乗り越えて受験を考える方もごく少数ですが存在するかもしれません。
また、建築学科を卒業はしたものの、長く別業種で働いていたり、卒業後建築業界で働いてはいるものの、自分の専門分野で使う知識以外はほとんど忘れてしまっている方もいらっしゃるでしょう。
そういった方々はテキストを読んだり、過去問に目を通してみても、理解にはかなりの苦戦を強いられるでしょう。
基礎や全体の大枠が分かっていないのですから当然のこととはいえ、その状況を独力で突破し合格するに足る力を付けるのは生半可な苦労ではないでしょうし、それも多くの方は日々の仕事をこなしながらの挑戦となることでしょう。
私がその状況であれば正直心が折れます。
また、この点は学科試験をクリアした後の製図試験についても同様のことが言えます。製図試験は学科試験とは別のノウハウが必要となってきます。そういったノウハウを発信している方はもちろんいらっしゃいますが、学科試験とはまた違ったコツがあります。学科と製図いずれも独学での突破は可能ではありますが、独学での難易度が高いのは後者でしょう。特に0からのスタートであればなおのことです。
そういった方々は一度総合資格学院に通って、建築士試験とそれに必要な知識の全体像だけでも早期に掴むことをお勧めします。
スケジュールを組むのが下手な方
建築士試験は最難関資格とは言わずとも、一朝一夕の勉強で突破するのは困難であるというのは間違いないと思います。
そしてその試験に合格するためには半年から一年程度は先を見通してスケジュールを組むのが必須となるでしょう。
そこで、時間をかけるべき場所の把握や、自分の苦手分野、得意分野の分析が出来ないままスケジュールを立ててしまうと早々にそのスケジュールは破綻してしまうでしょう。若しくはこなしたところで力はつかないという、時間を無駄にする最悪の結末を迎えてしまうかもしれません。
競い合い、協力することで力を発揮できる方&他人に提示されたタスクをこなすことが苦にならない方
残りの2点については特別語ることもないかもしれません。この2つを総括すると高校までのような学習環境で力を発揮しやすい方でしょうか。
学校での勉強が得意だった方にとっては総合資格学院の環境は非常に快適であると思います。
ただし、何度も語るように非常に高額であることは事実なので一度は独学で挑戦してみるのが良いと私は思います。
まとめ
これまで長々と語ってきましたが改めて結論を出します。
ごく一部例外を除いて、独学での受験をお勧めします。ただし、講義や教材の質は間違いなく高いので、前述した内容に当てはまる方は受講を考えてもいい。
これが私にとっての結論でした。
しかし、効率の良い学習法は人によりさまざまです。私は独学での受験を選びましたが、それによっていつまで経っても合格できないのでは本末転倒でしょう。そのため、通うだけの価値があると判断したのであれば覚悟を決めて、しっかりと一年で合格できるように必死になって勉強を進めましょう。その際は総合資格学院も大いに力になってくれることでしょう。
私自身も一級建築士合格を目指して勉強中の身です。この記事を読んで受講を決めた方、独学で進めると決めた方、そのすべてがライバルであり、同じ目標を志す仲間でもあります。
資格は所詮資格です。お互いに早々に合格し、もっと本当にやらなくてはいけないことに向かって進んでいきましょう。