吹き抜け 建築基礎知識

【住宅初心者向け】木造住宅の吹き抜けってどうなの?(基本編)

2024年9月1日

住宅を構成する要素の中でも悩む人が多いであろう「吹き抜け」

吹き抜けはその開放的なイメージに憧れる方が多い一方で、その欠点を知らずに採用して後悔している方が多いという印象もあります。

今回はその吹き抜けに関して基本的なことから勉強していきます。より詳細な記事も作成しているので、基本を読んでもっと詳しく知りたいという方は個別の記事も読んでいってください。

吹き抜けとは

考える男性

まずは最も基本的な部分から始めていきます。吹き抜けとは具体的にはどんなモノを指すのでしょうか。何となく知っているけど言語化したことは無い人が多いのではないでしょうか。

吹き抜けというのは、「建物の複数階にわたって天井がなく、上階と下階が一続きになっている空間」のことを指します。

別に予想外なことは無かったと思います。皆さんが吹き抜けをイメージしてと言われればちょうどそんな空間を想像したことでしょう。

吹き抜けはその上下階の繋がりによって、広々とした開放感を演出できるのが魅力です。例として、リビングの上に吹き抜けがあると、天井が高くなり、光が高所から差し込むので部屋全体が明るくなります。また、視覚的な広がりを感じるので、実際の床面積以上に空間を広く感じられる効果があります。

しかしその一方で、断熱性のなどが不足すると空調性能が不足し、光熱費の増加を招いたり、構造上の弱点となることを理解しておらず、災害時に倒壊の原因となったりすることもあります。

まずは構造、温熱環境、日常での欠点と、その対策について確認していきましょう。そして最後に意匠上の利点について考えてみようと思います。

構造

吹き抜けの躯体

吹き抜けは構造面からみると、二階の床が一部欠損していると捉えることができます。床が抜けていることがそんなに構造上の問題になるのかと思う方もいらっしゃるかと思います。では少し質問を変えてみましょう。

壁が一部欠落している建物と、壁が連続してバランスよく配置されている建物があります。この際、どちらの建物がより大きな力に耐えられるでしょうか。答えは明白でしょう。後者に決まっています。前者だと答える方は逆張りすることに生きがいを見出しているような私のようなひねくれものくらいではないでしょうか。話が少しずれたので戻しましょう。

後者の建物に前者と同等以上の耐震性を持たせるためには欠損している周囲の壁を補強してあげる必要があります。そして、その弱点を補強するという作業はそのまま吹き抜けにも当てはめることが出来ます。弱点を弱点のまま放置するということさえしなければ、十分な耐震性を確保することも可能です。実際に吹き抜けを設けながら耐震等級3を取得している住宅もたくさんあります。

吹き抜けの構造上の欠点やその補強方法についてより詳しく知りたい方は下記の記事にも目を通してみてください。

温熱環境

次に吹き抜けにより温熱環境上の問題点とその対策についてです。

吹き抜けは、上下階を連続させることで空気が自由に移動できるため、熱が上下階で分離、滞留しやすくなります。特に冬季において、暖かい空気が上層階に集まり、下層階が冷えやすくなる現象が発生します。この結果、暖房効率が大幅に低下し、室内の温度が不均一になるという事態が発生します。また、夏季にも同様で冷たい空気が下層階に留まりやすく、上層階が暑く感じられることがあります。

上記のように室内の温度が不均一になるだけであればまだましで、下手をすると暖房を全力運転しているのに寒くて上着を着るという方の話も聞いたことがあります。こうなってしまってはせっかくの魅力的な空間も台無しです。

こういった問題を回避するためにはまず第一に十分な断熱性と気密性を持たせるということが大切となります。それにより室内の熱が外部に漏れだす空調ロスを削減可能となります。これに加えて床暖房の採用など、低所から暖房を行うことで部屋全体を温めることが可能となります。床暖房や床下空調の採用が難しい場合はシーリングファンを採用して吹き抜けの空気をしっかりと循環させることで、十分な暖房効果を得ることができます。

吹き抜けの温熱環境については下記の記事でより詳しく解説しています。一読ください。

日常生活

最も重要となる日常生活における吹き抜けについてのお話です。

よく語られる吹き抜けの日常生活上の欠点として音や臭いの拡散が挙げられます。吹き抜けはその開放的な空間を提供するために、空間を仕切るものが何もないため音や臭いが直接家全体に拡散していきます。吹き抜けの有無による住み心地についての研究でも、音の拡散についての影響は大きく、臭いと比較しても多くの人が気になると回答している調査結果もあります。

これらに対しての対策としては換気性能を事前に検討し、十分な換気量の確保や換気経路の検討をすることが重要となります。一方で、音に関しては対策が難しく根本的な解決は難しいでしょう。しかし、吹き抜けのに面する壁の防音性能を高めることで、それなりの軽減は可能となります。

また、当然のことですが、吹き抜けを設けるということは2階の部屋として使える空間が減少してしまうということを意味しています。吹き抜けを採用しなければ2階の間取り次第では1部屋程度なら増やすことも可能となるでしょう。とはいっても、そこまで大規模な吹き抜けを設けるということは稀かもしれませんが、採用前に今後の生活や家族構成の変化などをしっかりとイメージしてみた方が良いでしょう。

日常生活における吹き抜けに関しての詳細は下記の記事にて解説しています。吹き抜けの有無による住み心地についての研究についても軽く触れているので併せてご確認ください。

意匠

吹き抜けを見下ろす

最後になりますが、これまで欠点ばかり挙げてしまったので、挽回していこうと思います。

記事の冒頭でもお話したように、吹き抜けを設けることによる最大の利点は何と言ってもその開放感でしょう。天井が高くなることで、部屋全体が広く感じられるだけでなく、自然光がたっぷりと差し込むため、昼間であれば照明が不要なほどの明るく開放的な空間が生まれます。これにより、住む人にリラックスした気持ちを与え、快適な居住環境を提供することができます。

また、吹き抜けは、建物のデザインにおいては非常に重要な要素となります。良くも悪くも吹き抜けを設けた時点で、その家の象徴となる空間になることでしょう。リビングや玄関ホールに吹き抜けを設けることで、訪れる人々に強い印象を与えることができるようになり、そこで暮らす家族にとっても思い出深い場所になります。また、吹き抜け部分に大きな窓を設置することで、外部の景色を取り込むことができ、自然との一体感を感じられる住空間を作り出すことも可能です。

また、吹き抜けは家族の繋がりを強固にします。吹き抜けを中心とした家は隔てるものが少ないため、自然とコミュニケーションが生まれるのはもちろん、居心地の良い吹き抜けは家族にとって家の象徴的な場所となり、無意識にその家の一員であることに誇りが持てるようになります。

意匠についての詳細も上記の日常生活編に合わせて記載してあります。是非ご確認ください。

最後に

結論

今回は吹き抜けに関しての基本的な知識や重要な点について一通り理解することが出来る記事を作成させていただきました。各要素についてはそれぞれより詳細に解説している記事を作成してあるため、より詳しく知りたい方はご確認ください。

吹き抜けは非常に象徴的な空間を作り上げることが出来る、非常に強い力を持った要素です。しかしその反面、弱点や欠点となり得る要素でもあります。吹き抜けを設ける際にはメリット、デメリットをしっかりと正確に把握して、弱点となる点に関してはしっかりと補強して、快適で安全な生活を送れるようにしてください。

もちろん個人で勉強するには限界があるため、最終的には家づくりを依頼する会社や各担当者にしっかりと頼って、分からないこと、不安なことがあったら、その都度納得できるまで確認してください。そこで回答を誤魔化したり、話を逸らそうとする業者は問題が起きる可能性が高いので、初期の段階からしっかりと相手を見極めることが出来るようになりましょう。

このブログではその初期の見極めをしっかりと出来るように、最低限抑えておきたい知識や用語を解説して、皆さんの家づくりのサポートをしていきます。今後も定期的に確認して、知らないことがあれば記事を確認して勉強していってください。

  • この記事を書いた人

櫛花樹已

愛知県在住で普段は建築設計事務所で働いています。 何かしたいと常に思っているくせに何かするのは面倒くさいという捻くれ者。そんな状況を脱却するために「とりあえずやってみます」の精神で色々やっていきます。

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